コラム

【よくある相談】孫に遺産を引き継がせたい場合,どうすればよいでしょうか。

【設例】

 私は現在,孫と一緒に暮らしています。妻に先立たれ,家族は息子夫婦と孫だけです。息子夫婦は仕事の関係で別の場所に住んでいるため,成人している孫だけが私と同居しています。同居する孫には大変世話をかけてきました。ある程度の財産はあるため,息子だけでなく孫にも遺産を引き継がせたいと思っています。孫は相続人ではないと聞きましたが,どうすれば孫にも遺産を引き継がせることができるのでしょうか。

 

【回答】

 誰が相続人となるのかについては,民法887条から890条に規定があり,息子さんがいらっしゃるとのことですので,息子さんが相続人となり,お孫さんは相続人に当たりません。そのため,お孫さんにも遺産を引き継がせたい場合,お孫さんを相続人にして遺産を相続させる方法と,お孫さんを相続人にすることなく遺産を引き継がせる方法が考えられます。

 

 お孫さんを相続人にして遺産を相続させる方法としては,養子縁組(民法792条以下)があります。養子縁組をするには,市区役所・町村役場への届出をすることになります。

 

 養子縁組により,お孫さんとの間に法律上の親子関係が生じるため(民法809条),本件ではお孫さんも相続人にあたることになります(民法887条1項)。本件の場合,息子さんとお孫さんの2人が相続人となり,それぞれ2分の1ずつ相続することになります。

 

 ただし,借金があるような場合は,その返還義務もお孫さんが相続してしまう点に注意が必要です。

 

 お孫さんを相続人としないで遺産を引き継がせる方法としては,贈与契約(民法549条)や遺贈(民法964条)といった方法があります。贈与契約とは合意によって財産を無償で与えることをいい,遺贈とは遺言によって財産を無償で与えることを言います。どちらも他人に財産を無償で与える点は同じですが,合意によるか遺言によるかという点で異なります。

 

 贈与契約は両者の合意が必要であるため,一方的に財産を与えたいと思っても成立せず,お孫さんが承諾しなければ贈与契約が成立することはありません。贈与契約は口頭でもすることができますが,後々の争いを避けるためには書面に残しておくことが大切です(なお,贈与については税務対策上も契約を書面化することが大切です。生前お孫さんに現金を贈与する意味で,その現金をお孫さん名義の預金口座に預金していたとしても,税務署はお孫さんとの「贈与契約」がないとして,同預金を相続財産と認定するおそれがあります。)。ただし,贈与契約は書面を作成しなければいつでも撤回することができます(民法550条)が,書面にすると自由に撤回することはできなくなりますので,撤回の可能性があるのならば注意が必要です。

 

 なお,贈与契約は生前に財産を与えておくのか,死亡したときに財産を与えるのかによって,さらに生前贈与と死因贈与とに分かれます。

 

 他方,遺贈は遺贈者の意思だけで成立するため,お孫さんの承諾を得る必要はありません。ただし,遺贈をする場合は民法に定められている方式に従って遺言書を作成する必要があります(原則として,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言という3種類の方式があります。)。なお,遺贈は贈与契約と異なり,改めて遺言を作成することによって,自由に撤回や変更をすることができます。

 

 その他の方法としては,生命保険の受取人をお孫さんと設定することにより,財産を引き継がせるという方法も考えられます。

 

 このように,お孫さんに遺産を引き継がせる方法としては,養子縁組,生前贈与,死因贈与,遺贈,生命保険といったように複数の方法があり,どの方法を選んでも構いません。

 

 しかし,どの方法がベストであるかはケースバイケースであり,お孫さんを相続人としたほうがいいのかどうか,撤回ができるのかどうか,法定の方式によらなければならないのかどうか,また,相続税や贈与税の負担はどうなるのかといった点を考慮して判断しなければなりません。

 

 そのため,上記の方法のうち実際にどのような方法がよいのかは,相続対策に詳しい弁護士に相談することがよいでしょう。

 

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