コラム

【よくある相談】養子は相続人になれるのでしょうか。

【設例】

 私は先日古希(70歳)を迎えましたが,2年前に患った病気の影響で余命はそれほど長くないと医師から宣告されています。ただ,私は孫にも恵まれ,現在,家族と幸せに暮らしています。妻と長男の家族(長男,長男の妻及び長男の子)と同居しており,義理の娘(長男の妻)には大変世話になってきましたし,孫(長男の子,15歳)の成長を見守ることが生甲斐となっています。

 

 近頃は,自らの相続について考えるようになり,義理の娘と孫にも遺産を相続させたいと考えるようになりました。2人を養子にして,遺産を相続させることはできるのでしょうか。

 

 

【回答】

 義理の娘様とお孫様のお2人とそれぞれ養子縁組をすることにより,相続時にお2人を相続人として遺産を相続させることができます。

 

 ご相談者様の状況では,普通養子縁組制度(民法第792条から同法第817条)を利用することにより,義理の娘様とお孫様2人を養子として,ご長男様と同等の相続分を相続できる相続人(第1順位の法定相続人,民法第887条第1項)とすることが可能です。

 

 つまり,遺言書を作成されない前提で,遺産の2分の1を奥様に,遺産の6分の1をご長男様,義理の娘様及びお孫様にそれぞれ相続させることができます。

 ただし,普通養子縁組制度が定める条件をクリアすることが必要となります。設例では,ご相談者様には奥様がいらっしゃるので,お孫様は奥様とも養子縁組をする必要があります(民法第795条)。

 

 一方,お孫様が15歳以上であり,またご相談者様の後の世代で直系の親族(直系卑属)であることから,お孫様の法定代理人の承諾(民法第797条)や未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可(民法第798条)といった他の条件については必要ありません。

 

 他方,養子縁組には相続税の節税効果が期待できる場合があります。相続税の総額を計算する場合において,課税価格の合計額から控除することができる基礎控除額は,平成27年1月1日以後に開始した相続では,「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため(相続税法第15条第1項),養子縁組により法定相続人を増やすことにより,基礎控除額を増加させることができます。

 

 ただし,相続税の行き過ぎた回避行為としての養子縁組が問題とされたことから,被相続人に実子がいる場合には,被相続人の養子のうち1人しか基礎控除額の計算において法定相続人の数に含めることはできません(相続税法第15条第2項第1号。なお,被相続人に実子がいない場合には,被相続人の養子のうち2人までを同計算において法定相続人に含めることができます。同第2号)。

 

 設例では,ご相談者様に実子であるご長男様がいらっしゃるため,相続税法上は,養子2人のうち法定相続人の数は1人として計算されます。

 

 よって,相続税法上の法定相続人の数は,奥様,ご長男様,養子のうち1人の合計3人となり,基礎控除額は,3000万円+600万円×3人=4800万円となります。

 

 これに対し,設例のようにお孫様が養子となっている場合は,お孫様の相続税額が2割加算されます(相続税法第18条第1項及び第2項)。これは,被相続人が孫と養子縁組をして遺産を相続させた場合には,被相続人から子へ,そして子から孫へ遺産が相続される場合に,本来であればその都度相続税が課税されるところ,被相続人から直接孫へ相続させれば相続税の課税が1度で済むという節税効果が生じることから(いわゆる「相続の一代飛ばし」),相続税の負担調整を図る目的で加算されるとされています(ただし,設例と異なり,被相続人の直系卑属が相続開始前に死亡し,又は相続権を失ったために孫が相続人となった場合を除きます。相続税法第18条第2項ただし書)。

 

 一方,設例では,お孫様が15歳であり未成年者であることから,相続時に日本国内に住所がある等,一定の条件に当てはまる場合には,未成年者控除として,本件では50万円の税額控除が認められます(相続税法第19条の3第1項)。

 

 以上のとおり,養子縁組には相続税の節税効果が期待できる場合があります(なお,相続税対策で孫と結んだ養子縁組の有効性が争われた裁判において,最高裁判所は,節税の動機と縁組の意思は両立するとしたうえで,縁組の意思が認められるケースであれば,節税目的の養子縁組であっても有効であると判断しています(最高裁平成29年1月31日判決)。)。

 

 設例のようなケース以外にも,誰を養子にして,どの遺産を相続させたいのか,様々なケースがあり得るところです。ご自身の叶えたいご希望に最適な養子縁組のあり方はどうあるべきであるのか,本コラムで紹介した制度以外にも,ご希望に沿う手段は色々と考えられる可能性があります。ご自身の相続に係る養子縁組についてご不明な点がある場合には,弁護士にご相談ください。

 

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