コラム

【よくある質問】お腹の中の赤ちゃん(胎児)や未成年者は相続人になれるのでしょうか。

【設例】

 私には夫と5歳の長男がいます。最近,第2子の妊娠も分かりました。しかし,夫が不慮の事故に巻き込まれ,帰らぬ人となってしまいました。夫とは以前から,自分の財産は子供の将来のためにあると話していました。そのため,このようなことになってしまい大変残念ですが,子どもたち自身に夫の財産を受け継がせたいと思っています。

 

 長男は未成年であり,下の子はまだ生まれてもいませんが,子供たちは夫の財産を相続することができるのでしょうか。

 

 

【回答】

 お子様方がお父様の財産を相続できるかは,お子様方が相続人にあたるかどうかによって決まります。だれが相続人となるかは民法に定めがあり,被相続人の子は原則として相続人になります(民法887条第1項)。成人しているかいないかで扱いに差はないため,本件でも5歳の長男はお父様の相続人となります。

 

 では,まだ生まれていないお腹の中の赤ちゃんも相続人としてお父様の相続人となるのでしょうか。

 

 まず,原則として,胎児は生まれてきて初めて権利義務の主体となります。そのため,この原則通りですと,まだ生まれていない胎児は相続する権利がないことになってしまいます。

 

 しかし,そうすると親が死ぬのが早いか子が生まれるのが早いかという偶然の事情によって,子が相続人になったりならなかったりします。このような不都合を避けるため,民法第886条第1項により例外が定められ,相続に関しては,胎児は生まれたものとみなされます。つまり,お腹の中の子も相続人として扱われるのです。

 

 ただし,これは胎児が生きて生まれた場合に限られ,残念なことに流産してしまった場合には,胎児は相続人とはなりません(民法第886条第2項)。

 

 よって,本件では,5歳の長男は相続人としてお父様を相続することができますし,お腹の中にいる赤ちゃんも,生きて生まれてくれば相続人と扱われ,お父様を相続することができます。

 

 実際に遺産分割をする段階では,以下の点に注意が必要です。

 

 まず,遺産分割をする場合,お母様はお子様方の代理人として遺産分割協議をすることはできず,特別代理人という代理人をつけなければなりません(お母様もご主人の配偶者として相続人になりますので,同じく相続人であるお子様の立場も代理してしまうと,ご自身の利益とお子様の利益とがぶつかりあう状態になってしまうからです。民法826条)。特別代理人を付けずに自身がお子様方の代理人として遺産分割の協議をすると,無権代理行為として,無効な遺産分割となってしまいます。特別代理人は家庭裁判所に請求して選任してもらうことになります。

 

 また,上記のように,胎児はお腹の中にいる段階では権利義務の主体にならず,生まれてきて初めて胎児のときに遡って権利義務の主体となると考えられていますので(大審院昭和7年10月6日判決),遺産分割協議はお腹の中の赤ちゃんが生まれてくるのを待ってから行うことになります。

 

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