コラム

【よくある質問】息子からひどい扱いをされているので遺産を相続させたくないのですが、どうすればよいでしょうか。

【設例】

 私は妻を亡くし,家族は息子と娘がおります。娘は結婚して家を出ておりますが,息子とは同居しております。息子は,昔から素行不良で,暴力を振るわれたことも数知れません。また,ろくに仕事もせず,お金の無心ばかりしてきます。最近は,ついに,借金が返せなくなったから今住んでいる私の家を売ってくれとまで言い出しました。

 

 このような状況であるため,もはや息子には財産を承継させるつもりはまったくありません。息子に遺産を相続させたくないのですが,どうすればよいでしょうか。

 

 

【回答】

 ご子息は相談者の子であるため,相続人にあたり(民法887条1項),原則として遺産を相続することが出来ます。

 

 ご子息に遺産を相続させないためには2つの方法が考えられます。

 

 1つ目の方法として,まず,遺産をご子息には相続させない旨を記載した遺言を作成することが考えられます。

 しかし,この場合,ご子息から遺留分減殺請求(民法1028条)がされる可能性があります。遺留分減殺請求とは,相続人の生活の保障の観点から,遺言によって自由に財産を処分できる範囲を制限し,一定範囲の相続人(配偶者や子,両親など)に一定額の財産を取得する権利を認めるという制度です。本件で相続人となるのは,お二人のお子様方ですので,民法1028条2号により,ご子息は遺産の4分の1を取得することが出来てしまいます。

 

 そのため,ご子息にまったく遺産を相続させないように遺言を書いたとしても,ご子息が遺留分の範囲での遺産を取得することを防ぐことは出来ないのです。

 

 2つ目の方法として,ご子息をそもそも相続人から外してしまうことが考えられます。

 民法892条により推定相続人の廃除という制度が定められています。ある相続人について,被相続人がその者に財産を承継させたくないのももっともだと思われるような事由がある場合には,被相続人の意思に基づいて,家庭裁判所がその相続人の相続権を剥奪することができるという制度です。

 

 遺留分を有する推定相続人が,被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたとき,又は,相続人にその他の著しい非行があったときは,被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。生前に請求するだけでなく,遺言によって廃除の意思表示をする方法も可能です。この場合は,遺言執行者が推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することになります。

 

 推定相続人の廃除が認められると,その推定相続人は相続人にあたらなくなります。そのため,相続人であることを前提とする遺留分も失うこととなりますので,まったく遺産を相続させないことが可能となるのです。

 

 裁判例では,末期がん患者の妻に対して,低温,雑菌のある生活環境を避けるべき状況にあるにもかかわらず,冬季の暖房代の節約と称して,自宅の居間をビニールシートでテントのように囲み,その中のみを暖房したり,集めてきた廃材を燃やすなどするといったような療養に不適切な環境を作り出し,その環境での生活を強いたことに加え,「五臓六腑が腐ってて,どうにもならんのだわ。」「黙っていてもまもなく死ぬんだから。」などと人格を否定する発言をしたりした夫(釧路家庭裁判所北見支部平成17年1月26日審判家庭裁判月報58巻1号105頁)や,父の多額の財産をギャンブルにつぎ込んで減少させ,父が自宅を売却せざるを得ない状況に追い込んだ長男(大阪高等裁判所平成15年3月27日決定家庭裁判月報55巻11号116頁)などについて,廃除が認められています。

 

 本件の場合にも,ご子息について推定相続人の廃除が認められる可能性がありますので,具体的な手続をする際は弁護士に相談するとよいでしょう。

 

その他のコラム

  • 【よくある質問】相続財産が不動産だけの場合,どうしたらよいでしょうか。

    相談内容  私は今年で70歳になり,これまで健康にやってきましたが,いざという時のために相続に備えた準備をして […]

    詳しく見る
  • 【よくある質問】死亡した親の預金を引き出してもよいのでしょうか。

    【設例】  先日,私の父が急逝しました。父の相続人は父の妻である母と,私,妹の3人であり,遺言書はありませんで […]

    詳しく見る
  • 単純承認とは

    1 はじめに  相続は,被相続人の死亡によって,当然に効力が生じます。相続人が被相続人の死亡を知っているかどう […]

    詳しく見る
  • 代襲相続とは

    1 はじめに  代襲相続とは,本来相続人となるべき者が被相続人より前に死亡し,または欠格(民法891条)や廃除 […]

    詳しく見る
  • 【よくある相談】相続人の中に犯罪者がいる場合,どうすればよいでしょうか。

    【設例】  私には妻と2人の息子がおりますが,今年70歳を迎えるにあたり,相続について考えるようになりました。 […]

    詳しく見る