コラム

【よくある質問】認知をしていない愛人の子は相続人になれるのでしょうか。

【設例】

 私は,現在,未成年の子どもと二人暮らしをしております。子どもはある男性との間にできた子なのですが,彼には妻子がおり,私はいわゆる愛人でした。子供が生まれても,彼は誰の子か分からないなどと言って,認知をしてくれませんでした。ただ,養育費は支払ってくれていました。最近,彼は病気を患ってしまったのですが,彼に万一のことがあれば,養育費の支払いもなくなり,子供を私一人の収入で育てていくには限界があります。せめて子供が彼の財産を相続できれば,養育費がなくてもある程度の生活は続けていけそうです。妊娠した時期は彼以外との関係を持っていないため,子どもが彼の子であることに間違いはないのですが,認知をしていなくても相続することはできるのでしょうか。

 

【回答】

 お子様がお父様の財産を相続できるかは,お子様が相続人にあたるかどうかによって決まります。

 

 だれが相続人となるかは民法に定めがあり,被相続人の子は原則として相続人になります(民法第887条第1項)。

 

 ここでいう被相続人の子とは,法的な親子関係があることを要します。母子関係は分娩の事実という血縁関係の存在が明白な事実がありますので,それをもとに決定されます。他方,父子関係についてはそのような明白な事実がないため,法律の適用によって父子関係を成立させることになります。

 

 婚姻中の母から生まれた子は,母の夫の子であると推定されます。これを,嫡出推定といいます。しかし,婚姻していない母から生まれた子の場合は,嫡出推定が及びません。そのため,「認知」(民法第779条)という手続により,父子関係を成立させることになります。

 

 認知は,子の父が市区町村の戸籍窓口に認知届を提出することによって行うことが出来ます。また,父の遺言によっても認知することが可能です(民法第781条。これらを合わせて「任意認知」といいます。)。

 

 仮に,子の父が任意認知をしない場合は,子,その直系卑属(子の子や,子の孫等のことです。)及びこれらの者の法定代理人は認知の訴えを提起することができます(民法第787条)。ただし,いきなり認知の訴えを提起することはできず,まずは家庭裁判所の調停を経なければなりません(家事事件手続法第257条第1項,第244条)。調停によって合意に至らない場合に家庭裁判所に認知の訴えを提起することになります。

 

 認知の訴えが認められるには,訴える側が,相手方が子の実の父であることを立証しなければなりませんが,通常,これはDNA鑑定によって判断することが出来ます。裁判の中で実の父であることが認められた場合は,判決によって法的にも父子関係が成立するのです。

 

 本件についてみますと,お母様は婚姻されておらず,お父様の認知もないということですので,現状ではお子様はお父様と法的な父子関係がありません。したがって,お子様は相続人には当たらず,相続することはできません。

 

 お子様をお父様の相続人とするためには,お父様が認知をする必要がありますが,任意認知に応じてくれない場合には,お母様がお子様の法定代理人として,家庭裁判所に認知の調停を申立てることになります。調停で解決できなければ,最終的には認知の訴えを提起し,判決で請求が認められれば,お子様は法的にもお父様の子として相続することができるようになります。

 

 愛人の子の場合は認知がなければお父様を相続することができませんので,お父様が認知に応じてくれないような場合には,認知を求める交渉や調停,認知の訴えについて,弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

 

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