コラム

【よくある質問】兄弟の中で私だけが親の介護をしていたのですが,遺産を多くもらえないでしょうか。

【設例】

 先日,私の母が亡くなりました。私の父は私が子どもの頃に他界しており,残された家族は長女の私と次女の妹,長男の弟の3人です。このなかで私だけが母と同居し,認知症により数年前から介護が必要な母をつきっきりで介護してきました。妹と弟は特に介護を手伝ってくれたり,金銭的な援助もしてくれませんでした。通常,母の遺産は子ども3人で均等に相続すると思うのですが,私だけが母の介護をしてきたのですから,多く遺産をもらうことはできないでしょうか。

 

【回答】

 ご相談のケースでは,3人のお子様方が相続人となります(民法887条第1項)。そして,複数の子が共同相続人の場合,法定相続分は均等になります(民法第900条第4号)。

 

 しかし,共同相続人のなかに,被相続人の財産の維持又は増加について,特別の寄与をした者がいる場合,その者に特別に遺産の一部が与えられます。これを,寄与分といいます(民法第904条の2)。

 

 寄与分として評価されるのは,例えば,①被相続人の事業に関する労務の提供,②被相続人の事業に関する財産上の給付,③被相続人の療養看護,④被相続人の扶養や財産管理,⑤事業とは関係のない財産上の給付,などが挙げられます。

 

 ただし,寄与分として認められるのは特別の寄与に限られますので,共同相続人がその寄与に対する相応の対価を得ていないこと,被相続人との関係において通常期待される程度を超えるものであることが必要です。

 

 これに加えて,寄与分が認められるには,寄与行為によって被相続人の財産が維持されたり,増加したことも要します。

 

 本件の場合も,同居の親子であったとしても,つきっきりで看護することは通常期待される程度を超える療養看護と考えられますので,介護の対価を得ていないのであれば,特別の寄与として認められる可能性があります。

 

 そして,数年間つきっきりで介護をしたことにより,介護士やホームヘルパーを雇った場合に支出する金銭の流出を防ぐことができていますので,お母様の財産を維持していたといえるでしょう。したがって,寄与分が認められる可能性が高いといえます。

 

 具体的に寄与分を定める場合,まずは,共同相続人間の協議によって定めることになります。

 

 しかし,共同相続人間の協議が調わないときは,家庭裁判所の調停や審判で定められ,その際は,寄与の時期,寄与の方法程度,相続財産の額その他一切の事情が考慮されます。

 

 なお,寄与分が確定した場合,具体的に相続する財産は以下のように計算されます。

 

① 相続財産の価額から寄与分額を控除

② ①によって算出された額を相続分に応じて分配

③ ②の額に,寄与分額を加算

 

 例えば,相続人として,被相続人の子であるA,B,Cがおり,相続財産が5000万円,Aの寄与分額が500万円である場合,

 

①5000万円-500万円=4500万円

②子3人の法定相続分は3分の1ずつであるため,4500万円÷3=1500万円

③Aにつき寄与分額500万円を加算し,1500万円+500万円=2000万円

 

したがって,A,B,Cがそれぞれ具体的に相続する額は,

A:2000万円,B:1500万円,C:1500万円

となります。

 

 寄与分の算定は複雑ですので,特別の寄与をしているという場合は相続問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

 

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