コラム

【よくある相談】遺産分割協議に応じない相続人がいる場合,どうしたらよいでしょうか。

【設例】

 90歳を過ぎても元気に暮らしていた両親でしたが,先日相次いで亡くなりました。両親の子どもは私と妹でしたが,妹は既に他界していました。妹には私の姪に当たる娘がいましたので,両親の相続人は,私と姪の2人になります。両親は,遺言書は遺しませんでした。

 

 私はこれまで両親の面倒を看てきました。この度両親が亡くなって,住宅地に所在する私たち姉妹が生まれ育った実家の土地建物が相続財産として遺りましたので,不動産業者に売却をお願いして,私の老後の蓄えにしたいと思っています。

 

 そこで,私は遠方に暮らす姪に久しぶりに電話で連絡を取って事情を話し,実家の土地建物を私がすべて相続して老後に備えたいと伝えたところ,相続登記に協力してくれるという返事をもらいましたので,司法書士の先生に依頼して,私への所有権移転登記手続のための必要書類を,姪に郵送してもらいました。

 

 しかし,姪から必要書類の返送はなく,手続ができない状態がしばらく続いていることから,改めて姪に電話や手紙で連絡しているものの,一向に連絡が付きません。親戚から聞いた噂によると,どうやら姪にも2分の1の相続分があることを知り,自分にも遺産を受け取る権利があるはずだと考えを変えているようです。姪には連絡を取り続けているものの,まったく話し合いに応じてくれる気配がないのですが,どうしたらよいでしょうか。

 

 

【回答】

 姪御様の住所地を管轄する家庭裁判所に,遺産分割調停を申し立て,調停での話し合いによる解決を図る一方,調停での解決がむずかしい場合には,手続が遺産分割審判に移行して,家庭裁判所の審判によってご実家の土地建物が遺産分割されます。

 

 被相続人(亡くなった方)が遺言書を遺さなかった場合には,遺産分割協議が必要となり,協議は相続人全員で行われる必要があります。遺産は,遺言がない場合には,相続人全員の共有という状態になり,相続人全員に権利が発生することから,一部の相続人が他の相続人の権利を勝手に処分したりすることは認められないからです。

 

 よって,設例においては,ご相談者様と姪御様の2人で遺産分割協議を行う必要があります。

 

 他の相続人との遺産分割協議での話し合いがまとまらなかったり,設例のようにそもそも話し合いに応じてもらえない場合には,家庭裁判所での手続によって,解決を図る必要があります。つまり,家庭裁判所での遺産分割調停と審判という手続を利用することになります。

 

 遺産分割調停とは,家庭裁判所の裁判官と調停委員という裁判所の非常勤職員が相続人の間に入り,相続人それぞれの遺産分割に関する主張や希望を聴いたうえで,相続人全員による合意の調整を試みる手続です。

 

 話し合いでの解決を目指す手続であることから,柔軟な合意の調整が可能で,法律の専門家である裁判官の意見を聴くこともできることから,相続人同士のみの遺産分割協議よりも,解決できる可能性が高くなる傾向にあります。

 

 手続のためには,遺産分割調停を申し立てる申立人が,手続を申し立てられる相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で申立てを行う必要があります。設例では,ご相談者様が申立人となり,相手方である姪御様の住所を管轄する家庭裁判所での手続となります。姪御様は遠方にお住まいのため,遺産分割調停を申し立てた後の調停が行われる期日に,ご相談者様が家庭裁判所に出席することは大変かもしれません。

 

 もっとも,遺産分割調停では,電話会議を利用することが考えられます。ご相談者様が調停手続を弁護士に依頼する場合には,通常,弁護士事務所への電話連絡により実施されることから,本人確認や情報保護の保証が認められ,遠方であるとはいえないなど,裁判所が相当ではないと判断する場合を除き,電話会議による出席が認められます。ただし,ご相談者様ご本人で手続を行われる場合には,本人確認の方法や情報保護などの観点から問題がないか,あらかじめ裁判所に問い合わせる必要があります。

 

 遺産分割の方法には,(1)現物分割,(2)代償分割,(3)換価分割,(4)共有分割の4種類の方法があります。

 

 分割方法の一般的な順位は,まず現物分割(遺産をそのままの形で1人の相続人が相続する方法)が検討され,それが相当ではない場合には代償分割(一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させたうえ,他の相続人に対して代償金を支払う方法)が検討され,代償分割もできない場合には換価分割(遺産を売却等で換金(換価処分)した後に,現金を相続人に分配する方法)が検討されます。共有のままとする共有分割は,最後の手段となります。

 

 設例では,遺産としてはご実家の土地建物のみであるようですから,ご相談者様が遺産のすべてを相続することになる現物分割は困難な状況であり,代償分割か換価分割が検討されることになります。

 

 申立て費用は,裁判所に納める収入印紙が被相続人につき1人1200円分と,連絡用の郵便切手(家庭裁判所により異なりますので,裁判所ウェブサイトや問い合わせにより確認する必要があります。)が必要になります。

 

 弁護士に依頼する場合の弁護士費用は,一般的には,遺産の総額に応じて着手金が決まり,加えて,最終的に獲得できた遺産の金額に応じた報酬金が決まります。この他,着手金・報酬金に加えて,弁護士が裁判所の調停期日に出席する回数で費用を調整したり,弁護士が手続のために要した時間単位で課金される報酬制などがあります。

 

 このような遺産分割調停により,裁判所による相続人間の合意の調整に応じない相続人がいる場合や,そもそも相手方が調停の手続に応じない場合には,遺産分割調停は不成立となり,審判手続に移行します。

 

 遺産分割審判においては,裁判官によって遺産分割の方法が決定され,解決が図られることになります。

 

 

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