コラム
不動産の名義変更について
1 不動産の名義変更の必要性
遺産の中に土地や建物などの不動産がある場合,遺産分割協議などによりその権利を取得した相続人などは,被相続人から登記名義を変更する必要があります。というのも,不動産の登記名義を変更しないでいると,様々な問題が起きてしまうことがあるからです。
たとえば,遺産分割協議で,ある不動産の相続人がAさんに決まったにもかかわらず,登記名義がAさんに変更されないでいたところ,他の相続人がその不動産を勝手に他人に譲り,その譲受人がAさんよりも先に登記名義を移してしまった場合には,Aさんがその不動産の一部を失ってしまう可能性があるからです。
その他,不動産を担保に借入れができなかったり,不動産を相続した相続人が亡くなってさらに相続が起こった場合には,権利関係が不明確になってしまうなどといった不都合も考えられます。
2 遺産分割協議による不動産の分割
遺言書で不動産の相続人が指定されていないような場合に,家庭裁判所での調停や審判という手続きを利用せずに遺産分割を行うためには,遺産分割協議という相続人の話し合いで不動産を誰がどのように相続するのかについて決める必要があります。
不動産の遺産分割には,(1)現物分割,(2)代償分割,(3)共有分割(4)換価分割という方法がありますが,ここでは,相続人などによる名義変更が必要となる(1),(2),(3)の分割方法をご説明します。
(1)現物分割
現物分割とは,個々の財産の形状や性質を変更することなく,遺産をそのままの形で特定の相続人が相続する方法です。
たとえば,不動産がAとBの2つ存在する場合に,Aの不動産は,相続人の妻が相続し,Bの不動産は子供が相続するという場合です。
(2)代償分割
代償分割とは,一部の相続人に法定相続分を超える額の不動産を取得させたうえで,他の相続人に対しては代償金を支払う方法によるものです。
たとえば,相続人として子供が2人いて,唯一の相続財産である不動産の価値が5000万円であった場合に,一方の子供がこの不動産を相続する代わりに,他の一方に対し2500万円を代償金として支払うような分割方法です。
(3)共有分割
共有分割とは,不動産を相続人の持分を決めて相続人の共有として取得する方法です。
たとえば,先祖代々受け継いできた不動産であるため,一部の相続人の一存で売却などの処分ができないように,相続人の子供が全員で等しい持分で共有するという場合が考えられます。ただし,このような特別なニーズがない場合には,不動産の処分に支障を来たしてしまうため,優先順位は低い分割方法です。
以上の方法で,不動産の分け方について話し合いが進み,相続人全員が合意することができたのであれば,その内容をまとめた書類である遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は,不動産の相続登記の手続きに必要になりますから,大切に保管してください。
4 不動産の名義変更手続
不動産の名義変更は,不動産の所在地を管轄する法務局に,登記申請書とともに以下の書類を提出して名義変更手続き(相続登記手続き)を行います。
(1)被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
(2)相続人全員の住民票の写し
(3)遺言書による場合は,遺言書
(公正証書遺言以外の場合は,検認調書謄本を添付します。)
(4)遺産分割協議による場合は,遺産分割協議書及び
相続人全員の印鑑登録証明書
(5)不動産の所有権を取得する相続人の戸籍謄本等
(6)固定資産評価証明書
(7)不動産の全部事項証明書
※ ただし,手続の内容に応じて,必要書類が異なります。
手続きに必要となる費用は,これら必要書類の取得費用のほか,固定資産評価価額の0.4%の登録免許税が必要です。登記申請時に収入印紙を購入して貼付します。
手続きが完了すると,所有者となる相続人に対して「登記識別情報」(登記済権利証の代わりとなるもの)が発行されます。