遺産分割について

遺産分割について(遺産分割が必要になる場合、遺産分割の対象)

 相続が起こり、相続人が複数であるにもかかわらず遺言書で全ての遺産の分け方が定められていない場合には、遺産を相続人の間で分ける「遺産分割」という手続きが必要になります。遺産分割では、その対象となる財産や、遺産分割の参加者、遺産分割の方法など、たくさんの知識が必要となりますので、以下でご説明します。

1.遺産分割とは

 遺産分割とは、相続人が複数であるにもかかわらず遺言書で全ての遺産の分け方が定められていない場合に、遺産を、相続人の間で分ける手続きです。そのため、遺産分割をするためには、そもそも誰が相続人となるのかという相続人調査と、何が遺産であるのかという相続財産調査が必要となります。相続人調査と相続財産調査については、「相続人調査&相続財産調査」をご一読ください。
 相続人と相続財産の調査が終わっていることを前提として、遺産分割には、相続人の協議で分割する協議分割と、協議が調わないときやできないときに用いられ、家庭裁判所において調停又は審判によって分割方法を定める調停審判と審判分割があります。調停分割は、審判分割の前に、家庭裁判所において裁判官や調停委員という裁判所のスタッフの関与のもと、相続人が話し合う手続ですが、それでも話し合いがまとまらない場合には、裁判官による最終的な判断である審判となります。

2.遺産分割が必要になる場合

 遺産分割は、遺産を相続する相続人が複数であり、遺産がある場合で、遺言によってすべての遺産の分け方が決められていないときに必要となります。
 相続人が1人であれば、遺産の分け方は問題となりませんし、遺産がなければ、そもそも分ける財産がありませんから、遺産分割は必要ありません。また、遺産があっても、すべての財産について、遺言書で分け方が定められているのであれば、その遺言が有効である限り、遺産分割は必要ありません。

3.遺産分割の対象

 遺産分割において、その分割の対象となる財産は、以下のように整理することができます。ただし、以下の財産以外の財産でも、相続人全員の合意によって、遺産分割の対象とすることができる場合がありますので、以下に挙げられていない財産について疑問がある場合には、当法人にご相談ください。

不動産 土地や建物などの不動産は、遺産分割の対象となります。
不動産賃借権 不動産賃借権は、相続によって相続人の(準)共有状態となるため、遺産分割が必要となります。
預貯金 最高裁判所の判決(平成28年12月19日判決)により、預貯金が遺産分割の対象とされました。
現 金 遺産である現金は、遺産分割の対象となります。
死亡退職金 退職金支給規程などの検討が必要となるため、当法人にご相談ください。
株 式 株式(社員権)は、相続によって相続人の(準)共有状態となるため、遺産分割の対象となります。
社 債 社債は、相続によって相続人の(準)共有状態となると考えられており、遺産分割の対象となります。
国 債 国債は、相続によって相続人の(準)共有状態となると考えられており、遺産分割の対象となります。
投資信託 投資信託は、その商品の内容などの検討が必要となるため、当法人にご相談ください。
電話加入権 電話加入権は、遺産分割の対象となると考えられていますが、近時は、電話加入権の取引相場が下落しているため、財産的価値はほとんどありません。
ゴルフ会員権 ゴルフ会員権は、その会則の内容などの検討が必要となるため、当法人にご相談ください。
知的財産権 著作権、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、不正競争防止法上の権利など、知的財産権は、遺産分割の対象となると考えられています。
動 産 動産は、相続によって相続人の共有物となるため、遺産分割の対象となります。ただし、動産が特定できない場合には、遺産分割の対象とならない場合があります。
事業 事業は、商号、伝統、社会的信用、ノウハウ、取引関係などと相俟って財産的価値を持つことから、事業全体の財産的価値を算出したうえ遺産分割上の対象とします。
農 地 農地は、土地所有権として遺産分割の対象となります。

以上の遺産分割の対象となる財産に対し、以下の財産は、遺産分割(又はそもそも相続)の対象にはなりません。ただし、相続人全員の合意によって遺産分割の対象とできる場合があることは前述したとおりです。

金銭債務
(相続開始前の債務)金銭債務は、法定相続分に従い各相続人が分割して相続します。その他葬儀費用、香典、祭祀財産、遺骨、遺産管理費用は、いずれも相続財産とはならないと考えられています。

金銭債権
(損害賠償請求権を含む。)
預貯金以外の金銭債権は、原則として相続分に従い各相続人が分割して相続します。
生命保険金 生命保険金は、保険金受取人の固有の権利として保険金請求権を取得するので、原則として相続財産とはなりません。
遺族給付 公務災害補償金、遺族年金、弔慰金、葬祭料等の遺族給付は、遺族固有の権利と考えられているため、相続財産とはなりません。
代償財産 遺産が相続開始後に滅失したり、処分された場合などに発生する保険金請求権や損害賠償請求権、売却代金を代償財産といいますが、これらは相続分に従い各相続人が分割して相続します。
遺産から生じた果実及び収益(相続開始後の賃料、利息など) たとえば賃料は、不動産を共有する相続人がその法定相続分に従い分割して相続します。
持分会社の
社員権及び持分払戻請求権
持分会社(合名会社、合資会社及び合同会社)の社員の地位(社員権)は、死亡が退社事由となっているため、相続の対象とはなりません。また、被相続人の死亡による退社を原因とする持分払戻請求権は、法定相続分に従い各相続人が分割して相続します(ただし、あらかじめ定款で社員の死亡時に特定の相続人がその社員の持分を承継する旨を定めておくことが認められています。この場合には、社員権がその特定の相続人に承継されるため、持分払戻請求権は発生しません。)。
協同組合の
出資金
出資金の持戻請求権は、単なる金銭債権と同じであると考えられているため、相続分に従い各相続人が分割して相続します。

4.遺産分割の参加者と法定相続分

 遺産分割の参加者は、法定相続人のほか包括受遺者、相続分譲受人、遺言執行者も含まれます。
 法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことをいい、たとえば配偶者や子ども、親や兄弟姉妹などが法定相続人に当たります。もっとも、これらの法定相続人は全員が同時に相続人となれるわけではなく、法定相続人の間には、相続人になる順位があります。また、法定相続人にはそれぞれ、法定相続分という相続できる相続財産に対する割合があります。以下の表をご覧ください。

法定相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者のみの場合 相続財産全部
配偶者と子(第1順位)の場合 配偶者が1/2 子が1/2
配偶者と親(第2順位)の場合 配偶者が2/3 親が1/3
配偶者と兄弟姉妹(第3順位)の場合 配偶者が3/4 兄弟姉妹が1/4

 まず、配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人となります。また、子どもは、第1順位の法定相続人となります(子どもがいなくても、相続が起こったときに孫がいる場合には、孫が子どもの代わりに第1順位の相続人となるとされていて、同様に、孫がいなくても、曾孫がいる場合には、曾孫が孫の代わりに第1順の相続人となります。)。したがって、被相続人に配偶者と子どもがいる場合には、配偶者と子どものみが相続人となり、法定相続分は2分の1ずつとなります。
 次に、被相続人の親は、第2順位の相続人となります(親がいなくても、祖父母がいる場合には、祖父母が第2順位の相続人になります。)。そして、子どもがおらず、第2順位の親が相続人となる場合で、配偶者がいる場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親が3分の1となります。
 最後に、兄弟姉妹は第3順位の相続人となります。子どもや親がおらず(第1順位・第2順位の相続人がおらず)、第3順位の兄弟姉妹が相続人となる場合で(相続時点で兄弟姉妹が死亡しており、その子がいる場合には、その子も相続人となります。)、配偶者がいる場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。

 遺産分割協議を行う場合には、上記の法定相続人等が、原則として法定相続分に従って遺産を分割していくことになります。

5.遺産分割の方法

 協議分割や調停分割では、相続人が合意すれば、どのような分割方法を採ることもできます。しかし、話し合いでの解決ができず、審判分割となった場合には、(1)現物分割、(2)代償分割、(3)換価分割、(4)共有分割の4種類の方法により、家庭裁判所が分割の仕方を決めることになります。分割方法の一般的な順位としては、まず現物分割が検討され、それが相当ではない場合には代償分割が検討され、代償分割もできない場合には換価分割が検討されます。共有のままとする分割は、最後の手段となります。

(1)現物分割

 現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく、遺産をそのままの形で相続するものです。たとえば、土地・建物や自動車、美術品などの不動産や動産を、そのまま1人の相続人が取得するケースなどです。

(2)代償分割

 代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させたうえ、他の相続人に対して代償金を支払う方法によるものです。たとえば、法定相続分を超える額の不動産を相続した相続人が、他の相続人に対して、その超過価額を代償金として支払います。
 この分割方法が認められるためには、現物分割が不可能であるなど、特別の事情が認められる必要があります。

(3)換価分割

 換価分割とは、遺産を売却等で換金(換価処分)した後に、現金を相続人に分配する方法です。

(4)共有分割

 共有分割とは、遺産の全部または一部を具体的相続分に基づいて相続人の共有として取得する方法です。

6.遺産分割協議の進め方

 家庭裁判所での手続きをせずに遺産分割を行うためには、協議分割、すなわち遺産分割協議という相続人の話し合いで遺産を分割します。遺産分割に期限はありませんが、相続税が発生する場合には、その申告期限である相続開始から10か月以内が一つの目安となります。
 遺産分割協議には、すべての相続人が参加する必要があります。相続人全員の合意に基づかない遺産分割協議は、無効となってしまいますから、一部の相続人を除外して合意することはできません。もっとも、遺産分割協議は、相続人全員が集まって行わなければならないわけではなく、遠方に相続人がいる場合などには、手紙やメール、FAX、電話などを使って協議することも可能です。なお、相続人に未成年の子とその親権者が含まれている場合には、親権者により子の利益が奪われることのないように、家庭裁判所により子に特別代理人を選任してもらう必要があることには注意が必要です。
 遺産の分け方についての話し合いが進み、相続人全員が合意することができたのであれば、その内容をまとめた書類である遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金の払戻しなどの各種の相続手続きに必要となりますから、大切に保管してください。

7.遺産分割調停、審判について

 協議分割、すなわち遺産分割協議が調わなかった場合には、家庭裁判所による遺産分割調停か審判が必要となります。
 遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員会の関与のもとに、遺産分割の話し合いを進めていく手続きです。調停委員が相続人の間に入るため、原則として当事者が直接顔を合わせる必要がなく、感情的になりにくいので、相続人のみで話し合いをするよりは、解決の可能性が高くなります。
 しかし、調停をしても合意ができない場合には、遺産分割審判、すなわち裁判所の審判によって遺産分割の方法が決定されます。遺産分割審判とは、裁判官が、提出された資料や当事者の主張内容を検討し、遺産分割の方法を決定する手続きです。なお、調停が不成立で終了した場合には、調停の申立てのときに遺産分割の審判の申立てがあったものとみなされ、手続きは審判手続きに移行します。
 審判が出た場合には、その審判で決められた内容で遺産分割を行うことになりますから、審判書を使用し、不動産の名義書換や預貯金の払戻しなどの相続手続きを進めていくことになります。ただし、審判が出た場合でも、その審判に異議がある相続人から、その審判の取消しや変更を求める手続(即時抗告といいます。)が2週間以内に申し立てられると、高等裁判所でその審判に問題がなかったかどうかの審理が行われます。そのため、2週間以内に即時抗告が行われなかったか、即時抗告により高等裁判所の裁判が出るまでは、審判書を持参しても相続手続きができません。相続手続きには、このように即時抗告期間が経過するか、または即時抗告により高等裁判所の裁判が出た場合に発行することができる確定証明書という書類の添付が必要になります。この確定証明書は、家庭裁判所で交付を請求することができます。なお、高等裁判所の裁判に対して更に異議がある場合には、最高裁判所に異議を申し立てる手続(特別抗告又は許可抗告といいます。)がありますが、これらの申立てがなされても、確定証明書の発行は可能であり、最高裁判所によって高等裁判所の裁判どおりの相続手続きがなされることを停止させられることは極めて希なケースとなります。

8.まとめ

 遺産分割を行う場合には、その前提としての相続人調査と相続財産調査が必要となり、その後に遺産分割手続きが続きます。遺産の範囲やその評価が難しい場合には、手続きに長期間を要することもあり、遺産が長い間相続人の共有となってしまうこともあります。できる限り早期に遺産分割を解決するためには、弁護士に相談することをお勧めします。