名義変更

名義変更

 相続が起こり、相続人がどの遺産を相続するのかが決まった場合には、名義変更が必要となります。名義変更を行わないと、遺産の名義が死亡した被相続人のままとなるため、たとえば不動産の売却や預貯金の払戻しなどができないからです。そして、遺産にはいろいろな種類の財産があるので、それぞれの名義変更の方法について知ることが必要です。そこで今回は、遺産の名義変更の方法をご説明します。

1.遺産分割が終わったら、名義変更をしよう!

 相続した財産の種類によっては、その名義や登記、登録などを被相続人から相続人に変更しなければなりません。たとえば、土地や建物などの不動産については、登記名義を変更しないでいると、大きなトラブルに巻き込まれる場合があります。たとえば、遺産分割協議においてある不動産を相続する相続人Aが決まった後に、他の相続人がその不動産を勝手に他人に譲り渡してしまったうえ、その他人がAよりも先にその不動産の登記を移した場合には、Aがその不動産の一部を失ってしまう可能性もあります。また、預貯金は名義変更等をしないと、お金を引き出すことができませんし、株式を相続して株主になったとしても、名義書換という手続を行わないと、他の相続人と法律上求められる手続きを踏まなければ配当の支払いを受けたり、株主総会に参加することができなくなるなど、さまざまな不都合が生じてしまいかねません。そこで、以下では代表的な財産の名義変更方法について、ご説明します。

2.法定相続情報証明制度の活用について

 以下で個々の財産の名義変更方法をご説明する前に、「法定相続情報証明制度」という制度についてご説明します。この制度は、平成29年5月29日から始まった制度です。相続人が法務局に提出する戸籍等と、相続人が作成する「法定相続情報一覧図」と呼ばれる被相続人と相続人間の関係を家系図のように記載した一覧図を、相続人の申請により法務局の登記官が確認し、すべての相続人が掲載されていることが認められれば、法務局の認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」(戸籍の内容と相違がないと法務局が認めた証明書)を発行してもらえるという制度です。

 これまで、相続財産の名義変更のためには、まず相続人が、誰が相続人となるのか確認するために、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集めたうえ、名義変更が必要となる財産に関係する各機関(法務局、金融機関等)にその戸籍をすべて提出し、それらの機関が個別に、提出された戸籍に不備がないかをそれぞれ確認するという、大変な手間が発生していました。そこで、相続人の法務局に対する上記申請により、一度法務局が戸籍の内容と相違がないと認め、そのことを証明する法務局の認証文が付された「法定相続情報一覧図」の交付を受ければ、その後はその一覧図を提出することにより、各機関に対する、戸籍の提出に代えることができるようにしたのです。提出先の機関の数が多くても、再交付が可能ですし、発行手数料も無料です。

 申請先の法務局は、次の4つの法務局の中から選ぶことができます。

① 被相続人の本籍地を管轄する法務局

② 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局

③ 申請人の住所地を管轄する法務局

④ 被相続人を表題部所有者又は所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する法務局

 ただし、法定相続情報証明制度は、まだ始まったばかりの制度です。そのため、各機関においてこの制度にまだ対応していないことも考えられます。ですから、この制度を利用する際には、事前に法定相続情報一覧図の写しを、戸籍に代えて提出できるかどうか、各機関に問い合わせる必要があります。

3.不動産の名義変更の方法

 被相続人が不動産を所有していた場合には、上記のとおり名義変更が必要となります。

 名義変更のためには、不動産の所在地を管轄する法務局に、登記申請書とともに、①被相続人の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、②相続人全員の戸籍謄本、③遺言書による場合は、遺言書(公正証書遺言以外の場合は、検認調書謄本を添付します。)、④遺産分割協議による場合は、遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑登録証明書、⑤不動産の所有権を取得する相続人の住民票等、⑥固定資産評価証明書などを提出します(その他手続きの内容に応じて、必要書類が異なります。)。

 費用としては、固定資産評価価額の0.4%の登録免許税が必要です。登記申請時に収入印紙を購入して貼付します。登記が完了すると、所有者となる相続人に対して「登記識別情報」(登記済権利証の代わりとなるもの)が発行されます。

4.預貯金の名義変更の方法

 大多数の被相続人は預貯金口座を持っていますから、相続が起こった場合には、大抵の相続人は預貯金を相続することになります。そのため、預貯金の引出しや解約のために、名義変更を行わなければなりません。手続きには、預貯金通帳などや、手続きを行う相続人の身分証明書の他、下記の表に記載された必要書類を各金融機関に提出します(一般的な提出書類であり、下記以外の書類の提出を求められる場合があります。)。

手続 必要書類
遺 言 (1)相続届(各金融機関所定の書式)
(2)遺言書(公正証書遺言以外の場合は、検認調書又は検認済証明書添付)
(3)被相続人の戸籍謄本等(死亡が確認できるもの)
(4)預金を相続する相続人の印鑑登録証明書
遺産分割協議 (1)相続届(各金融機関所定の書式)
(2)遺産分割協議書
(3)被相続人の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(4)相続人全員の印鑑登録証明書

5.株式や国債の名義変更の方法

(1) 上場株式の場合

 上場株式の株券については、平成21年1月5日以降電子化されたため、保管振替制度(証券会社等の手続きを通じて、「証券保管振替機構」に株式を保管させ、株の売買にともなう受渡しなどの手続きを簡素化・迅速化する仕組み)により、証券会社等の口座に記録されている株式である場合には、相続人は自己名義の取引口座を証券会社等に開設のうえ、証券会社等に相続による株式の移転申請を行います。

 これに対し、株券電子化の実施までに証券保管振替機構に預託されなかった株式の場合には、株式発行会社が開設した信託銀行等(株主名簿管理人といいます。)の特別口座により管理されているため、相続人は自己の特別口座を開設のうえ、株式発行会社又株主名簿管理人に対し、自己の特別口座への振り替えるように請求します。

(2) 非上場株式の場合

 非上場株式であり、遺産分割協議により相続する場合には、株券発行会社に対して、①株券(株式発行会社の場合)、②株式名義書換請求書兼株主票、③被相続人の戸籍謄本類及び相続人全員の戸籍謄本(相続人の範囲が確認できるもの)、④遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑登録証明書を提出する必要があります。

 遺言書により相続する場合には、上記①、②の書類のほか、遺言書及び遺言者の戸籍謄本類を提出する必要があります。

(3) 国債の場合

 国債の場合には、国債を購入した金融機関で手続きを行います。一般的には、上記4でご説明した預貯金と同様に、名義変更等が必要となります。

6.自動車の名義変更の方法

 自動車も相続財産となりますから、名義変更が必要となります。手続きは、自動車の使用の本拠地を管轄する運輸支局又は自動車検査登録事務所で「移転登録申請書」を提出して行います。移転登録申請書に添付する必要書類は、上記4でご説明した預貯金の名義変更に必要となる書類と、自動車検査証、車庫証明書(ただし、被相続人と相続人が同居家族の場合は不要となる場合があります。)などとなります。

7.まとめ

 このように、遺産を相続した場合には、各種の名義変更手続きが必要となりますが、遠方や海外にお住まいなど、手続きを行うことが困難な状況にある方もいらっしゃると思います。そのような場合には、遺産整理業務を弁護士に依頼されることをお勧めします。